
元NHKアナウンサー、学び直しで英語コーチとして起業。一年経って思うこと
2011年、夫のシンガポールへの転勤によってそれまで17年務めたNHKアナウンサーの職を辞したものの、NHKラジオ第一放送の定時ニュースや朗読・ナレーション講座の講師などのアナウンス業はシンガポールから帰国後もずっと続けてきました。
しかしながら、「あること」によりその生活が急変。5か月にわたる英語コーチ養成講座を経て、英語コーチとして、去年独立・起業しました。28年ぶりにTOEICテストを受け、30年以上ぶりにNHKラジオビジネス英語を聞き始めたばかりでなく、全国や海外の英語コーチ仲間とともに切磋琢磨しながら、アドラー式コーチング講座、発音やリスニング、文法の教え方講座などの個別講座を取り、学び続ける日々を送っています。
私の生活を激変させるきっかけとなった「あること」とは、組織の改編により仕事が大幅に減ったことです。NHKのOB・OGアナウンサーの一人として、日本語のことばセミナー全般を運営する部署から恒常的に講師業を請け負っていて、可能であれば80歳くらいまで続けられたらと漫然と思っていました。ところが、その仕事が急になくなってしまったのです。
そこで行ったのが人生棚卸しです。紆余曲折を経た結果、「そうだ!私には英語があった」と思い出しました。「思い出す」と書くと、忘れていたように聞こえますが、自分の人生において背後にぴったりとくっついていた存在のようでいたため、あまり表に出てこなかったと言ったほうがしっくりくるかもしれません。
私の本格的な英語との出会いは、NHKのラジオ講座です。当時通っていた近所の公立中学は荒れていて、授業崩壊のような状態でした。そんな中で聞き始めたラジオ講座。流れてくる英語の美しい音にひかれ、「世界を開けてくれる扉」のような感覚をいち早くもちました。その後は大学時代のアメリカへの交換留学や、留学生受け入れプログラムの学生ボランティア、海外文通などを通して英語と触れ合ってきました。そして娘を出産してからは、彼女の英語習得に伴走。娘は小学校5年生で英検1級取得。中学2年生でTED Talkのスピーカーとして登壇することができました。
英語の指導経験は、大学生の頃の家庭教師以外は特にない状況でした。しかしながら、クライアントさんの英語の目標に向けて日々の英語学習に伴走する「英語コーチ」でしたら、娘の英語習得に付き合った経験や、自分の学習経験を生かし、私でもできるのではないかと思い至ったのです。
前述の英語コーチ養成講座にて、英語学習法、コーチング、さらには個人事業主として避けて通れないセールス法などを学びました。他に取った講座も含め、自己投資額は軽く100万円を超えます。NHKを辞めてからも、特に営業することなくアナウンスの仕事を続けてくることができた「サラリーマン気質」の私にとって、非常に大きな転機でした。SNSの発信も正直一生無縁だと思っていたほどでなのですが、「清水の舞台から飛び降りる」ということわざが決して大げさではない心境で、プロフィール写真を載せ投稿をし、ハッシュタグの出し方すらわからない状態からインスタグラムを始めたりもしました。今回のARIAの記事の小林由紀子さんも「コミュニティができたことが自分としては財産だ」と語っていらっしゃいますが、私もまさに同じ思いでいます。
英語コーチ養成講座で一緒に学んだ仲間をはじめ、先輩、後輩コーチの属するコミュニティにて、「第二の青春」のような刺激を受けています。そうした仲間の頑張りが、私にとってのエネルギーとなっています。また、SNSに投稿し始めたことなどがきっかけとなり、古くからの友人との交流も復活しました。
英語コーチとして起業してからちょうど1年。現在受け持っているクライアントさんは、高校生から50代まで。オンラインの恩恵により、アメリカ在住や遠く関西の方などともやりとりし、英語学習に伴走する充実した日々を送っています。
50代での新しいチャレンジではありましたが、小林さんの記事の通り「新たな人生のドア」が開かれた感覚でいます。